Ω`s Music Film

自称「平成の名曲ハンター」の高校生が、思うがままに音楽を布教するブログです。

アルバム「ひみつスタジオ」全楽曲感想~後編~

※注意※

この記事は後編です。前編を見ていない方は、そちらを先に見ることをおすすめします。

後編では、アルバム7曲目の「手鞠」から最後の「めぐりめぐって」まで、9曲目の「紫の夜を越えて」を除いたすべての曲と、番外編として、シングル「美しい鰭」のC/Wナンバー、「アケホノ」の感想を挙げていきます。

 

★7曲目「手鞠」

歌詞から曲調から、最近のスピッツを象徴する曲です。今回のアルバムについて、「優しくてかわいい」みたいな表現を、雑誌のインタビューで草野さんが語っていましたが、正にそれそのものです。

また、前編の「さびしくなかった」でも取り上げましたが、明らかに今の草野さんだからこそ書けた歌詞だと思います。主人公の視点が「手鞠=君」にしか向いていないという、もしかしたら、ガチガチの恋愛ソングなのでしょうかね。それも1体1の。ちなみに漢字情弱の私、最初はタイトル読めませんでした(笑)。ホント、ダメですね。

軽はずみなリズムが癖になる、面白いナンバーでした。中盤という事もあったり、それからその前の曲の余韻が残っているせいで、最初に聴いたときの記憶はほぼ抹消しています。それから、曲に陰りがないので、割と誰でもすんなりと聴ける曲だと思います。スピッツをよく知らない人に聴かせても大丈夫そうです。

★8曲目「未来未来」

これまた新たな扉を開いた作品です。民謡とロックの融合ですが、民謡の影がほとんど感じられません。

この曲で全編を通して聴こえる女性のボーカルは、朝倉さやさんという方です。

「さざなみCD」の「Na・de・Na・deボーイ」、「醒めない」の「ハチの針」等、最近のアルバムでよく見かけるラップ調の曲です。こう、新しい事に挑戦しつつも、近年のルーツを入れるところ、好きです。

この曲の特徴として取り上げられるのは、韻踏みを多用しているところですね。特にサビ、「未来×2→嫌い×2→未来×2→君以外」が1番、「未来×2→時代×2→未来×2→君以外」が2番、同じ言葉を繰り返して使うのは、初期の作品から存在していますよね。朝倉さんのバックは、さながら初期…いや、デビュー当初の曲たちが思い浮かびます。

曲のつなぎで見ると、この曲から次の「紫の夜を越えて」のつなぎが一番好きですね。

★10曲目「Sandie」

昨年行われたイベント「GOGOスカンジナビア(通称ゴースカ)」で初めて披露された曲です。歌詞中の「新宿」は、「野生のポルカ」の「武蔵野の空」、「不死身のビーナス」の「ネズミの街」、「けもの道」の「東京の日の出」みたいに、ツアーを開催する地名ごとに変わるとおっしゃっていました。

この曲もまた、過去作との繋がりを感じることが出来る曲です。特に90年代のスピッツ全般が好きな人は必聴です。

リズムは「鈴虫を飼う」+「魔法」で、途中の「Uh…」のscat(?)は、「マフラーマン」みたいな感じです。また、この曲の歌詞の、「虎の威を借りるトイソルジャーたち」や、「しなやかでオリジナルなエナジー」等の歌い方、気に入っています。

別に浮いているわけでもない、どこぞとなく元気がもらえる曲です。ライブだとまた違った楽しみ方が増えるのでしょうか?ツアーに期待です。

★11曲目「ときめきpart1」

広瀬すずさん主演の映画「水は海に向かって流れる」の主題歌で、アルバム発売の1週間前にラジオで解禁、その後はCDTV、Mステと、テレビでも披露されています。

発表された当初は、「三日月ロック その3」みたいな曲なのかな?…と思っていましたが、ここで表す「part1」というのは、「初めて?のときめき」という意味だと思います。

CDTVで初披露されたときは、特に歌詞についてで様々な感想が飛び交っていましたね。(私はまだ見れていませんが…)

ストリングスは過去に何曲かありましたが(「魔法のコトバ」「正夢」「漣」「チェリー」等)、ソロのバイオリンってのは、初めてみたいですね。イントロからアルペジオとソロバイオリン…私はこの時点でときめきました。

それから、この曲の制作秘話として、草野さんがおっしゃっていましたが、この曲、元々はバラードのアレンジになる予定だったみたいです。…イメージだと「正夢」が近いのでしょうか?しかし、映画の制作サイドから「そっと背中を押してくれる曲を…」という指摘(?)が入って、今のアレンジになったみたいです。

元のバラードアレンジの「ときめきpart1」も、いつか聴いてみたいです。


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★12曲目「讃歌」

…でも、「ときめきpart1」もバラードアレンジだったら、ここで泣いていましたね。個人的なイメージとしては、「さらさら」の続編的な立ち位置の曲だと思います。「今は言える 永遠だと」という歌詞から、東日本大震災で急性ストレス障害になってしまった草野さん、「さらさら」では震災後の草野さんの心情が描かれていて、「永遠なんてないから」と歌っていました。しかし、10年で心の変化があったのか、真逆の事を言っているのですよね。

この曲は「讃える歌」と書いて「讃歌」なんですけど、それを裏づけているのが、正しく讃美歌のようなバックコーラスですよね。聴いていく内に自然と耳に馴染みます。

またこの曲は「オバケのロックバンド」同様、MVもあって、これがまた泣けるのなんの、あんなにわちゃわちゃした雰囲気のMVから、一気に大人びた、美しいものですよ!イメージ的には、「ありがとさん」のMVをモノクロにした感じです。ホント、スピッツの可能性は無限大ですね。

★13曲目「めぐりめぐって」

本来は1曲目に置く予定であった、セルフプロデュースの曲です。1曲目に置きたかった理由は、歌詞からも十分読み取れます。「なんでロゴのフルーツがデコポンなの?」とか、「どうしてタイトルが「ひみつスタジオ」なのか?」とか、様々な疑問がこの曲で解決されました。

曲調については、最近のアルバムのラストナンバーの流れをそのまま受け継いだ感じでした。「ヤマブキ」や「こんにちは」等ですね。だがしかし、ストレートなままで終わらせないのがスピッツ、実はラスサビ前に、一回リタルダントしているのです。その後の戻り具合は、さながら「ブチ」を彷彿とさせます。

本来1曲目に来る予定であった分、最後まで貯めてネタばらしという完璧な流れにやられました。ツアーでは最後にこの曲をやりそうですが、是非とも、最初にやって頂きたいです!

★番外編「アケホノ」

4月12日発売の通算46作目のシングル「美しい鰭」のC/Wナンバーで、前編で取り上げた「祈りはきっと」同様、アルバム「ひみつスタジオ」未収録です。

こちらの曲は、最初聴いたときは正直ピンとこなかったのですよ。まずタイトルが謎だし、この曲は個人的にスルメ曲でした。聴き込むほど解釈が広がって、今となってはかなり気に入っています。特に、「なんとか正当化しようと」の部分の歌い方は、全楽曲の中で見ても一二を争うぐらい好きな歌い方です。

この曲については…「紫の夜を越えて」と繋がっているなと思いました。歌詞に「生きていて良かった そんな夜を探していくつもの夜更かしして やっと会えた朝」とあって、…「紫の夜を越えて」のタイトルをそのまま言い換えている様に感じるのですよ。ですので私の勝手な解釈ですが、「アケホノに誓う=紫の夜を越える」という風に考えています。

「ロビンソン」や「チェリー」ぐらいしか知らないという人でも、この曲は入りやすいと思います。

 

★アルバム総評

前編の最初にも言いましたが、本作はガチの神作です。

Spotifyにて配信されているポッドキャスト番組、「Liner Voice」を聞いて、このアルバムの収録曲たちの様々な裏話を、メンバーから直に話してくださるのもあって、よりアルバムの世界に浸ることが出来ました。

一つ一つの曲を見ていても、割と昔からアイデアとして留めていた物もあったり、そんな要素ばかりかと言われるとそういう訳でもなく、所々にスピッツらしさを感じる曲もありました。

また、今回のアルバムの収録曲たちは、かなり個性的で、アルバム曲内の繋がりがあまりなかったり、曲調がかなり分かれていることもあるので、シャッフルで聴いても何の違和感もなく聴ける、いい意味で今の時代に合ったアルバムだと思います。

なんにせよ、今回のアルバムは、ファンは必聴です。思わずニヤリとしてしまう箇所もあったりします。

さらに、CD、サブスクリプション、アナログレコードに加えて、今作はカセットテープでも販売しているのですよね。値段はCDの通常盤と変わらないので、もしラジカセにカセットテープを流せる機能が付いている物を持っている人は、購入を検討してみるのもいいですね。ちなみに現在の私の手元には、初回限定盤しかないのですが、カセットテープも購入する予定です。

最後にまとめると、「メジャーデビュー30年を越えて伝えたかったこと全てが、『音楽』という形で表現されている、新参古参関係ない、毒も癒しもトゲも感動も、スピッツのすべてを詰め込んだ最高傑作」です。

★以上!

今回はここまでです。前編、後編合わせて約7600字ほどのレポート、最後までお読みいただき、ありがとうございました!

では、またお会いしますよ!お元気でー!